ヒッグス発見に到達した人類、原子力を野に放ってしまった人類

●ヒッグス粒子の発見に全世界が沸きました。テレビ画面に見入る研究者、学生たちの感動と憧れに満ちた目の輝きが忘れられません。考察や理論という頭の中の働きの結果にすぎないものが、正確に世界を映しとっていたのだという喜びと自信でしょうか。人間の想像力と知恵がここまで到達したという一つの記録と言えます。ヒッグス理論の理屈は何も分からない私のような人間でさえその気持ちの少しは共有できますから、専門家の胸中はいかほどかと察します。

 

●研究の拠点になった「CERN(セルン:欧州原子核研究機構)」といえば、ダン・ブラウンの小説『天使と悪魔』で知った方も多いと思います。私がその一人。あそこに出てきた「物質と反物質」、私にとってはナンダソリャ?の理解を超えた単語にも関わらず忘れがたく記憶されていました。スイスとフランスの国境にあるこの施設を利用・運営するメンバー国は欧州の20カ国。理事等を出さないオブザーバー国・団体として日本やインド、イスラエル、ロシア、トルコ、アメリカ、そしてEC、ユネスコがあります。ECやユネスコが入っている理由は、加盟国が不利な扱いを受けていないか、国際条約に違反する危険な実験を行っていないか(具体的には核実験)を監視するためだそうです。

 

●「天使と悪魔」では「反物質」が犯罪者の脅迫の道具になっていました。ヒッグス粒子がこの先どんな応用科学を発展させるかはまだ未知の世界ですが、研究者や学生たちの目の輝きが純粋であればあるほど、研究者倫理・技術者倫理が研究の前線に立ち遅れてはいけないのだろうと感じます。

 

●原発もまさに倫理が立ち遅れた結果です。人類の手に負えない力をこれ以上野に放つわけにいきません。新潟市で8日、「原発ゼロへ! 新潟県民大集会」が午後1時から県スポーツ公園で開催されるそうです。都会では首相官邸前で、原発再稼動に対する数万規模の抗議行動が起こっています。過疎と経済格差につけこまれた原発の地元で大きな声を上げることは、もっと大きな意味があるのかもしれません。