●都議会の一会派である東京維新の会が、「日本国憲法は無効で、大日本帝国憲法が現存する」との請願に賛成したとの報道が先日あった。都議会9月定例会でのこと。そもそも同請願の紹介議員だった。
請願の内容は、「日本国憲法は占領憲法」だとし、「国民主権という傲慢な思想をただちに放棄すべきだ」と主張するものだという。
橋下大阪市長はこれについて9日、「八策のうち地方に関係することは100パーセント賛同してもらわないといけないが、そうでない部分は政治家の自由行動だ」「党本部であれやこれや言わない」と述べていた。
ところが、10日になると「大日本帝国憲法復活はありえない」と述べ東京維新の会から「始末書みたいなもの」を受け取ったことを明かした。日本維新の会は、今後の同会の傘下に入るなら「完全な政策一致が必要。考えを改めてもらいたい」として連携保留を東京維新の会に伝えたという。
紹介議員になった当の都議会議員野田数(のだ・かずさ)は、橋下氏が率いる「維新政治塾」の塾生だ。日本維新の会は、東京維新の会を東京支部にする方針を決めていたという。
●日本維新の会は「八策」で「憲法改正」を掲げているから、憲法の有効性を当然ながら承知している。同会の憲法改正の中心テーマの一つには9条があるようだ。
橋下氏は9条についてこんなことを言ってきた。
・九条とは、他人が困っているときに、自分が嫌なことはやりませんよという価値観だ。
・平穏な生活を維持しようと思えば不断の努力が必要で、国民自身が相当な汗をかかないといけない。それを憲法九条はすっかり忘れさせる条文だ。
・(がれきの処理がすすまないのは)すべて憲法九条が原因だと思っている。
・九条がなかった時代には、皆が家族のため、他人のために汗をかき、場合によっては命の危険があっても負担することをやっていた。
「?」と首を傾げざるを得ない論理の飛躍だ。というより言いがかりとしか思えない。
これまでも橋下氏は大阪市長として市職員の思想調査ともいえるアンケートを強制したり、君が代の「口パク」調査をしたり、基本的人権や国民主権という、戦争放棄とならぶ現憲法の基本理念に挑戦してきた。橋下氏が東京都議会の請願賛成について当初穏便だったのには、それなりの思想的共鳴があるからではないかと思う。
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